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構造計算偽造事件について

さて、事件が話題にのぼってから1週間以上が経ちましたね。
最近真面目な話題から遠ざかっていますが、この問題は専門家として
少しだけ見解を述べておこうかな。

まだイロイロと調査段階だとは思うけど、断言しておくけど
この事件は建築主も施工業者も設計事務所も全部グルである
まぁ実際のところは建築主がグルかどうかはかなり微妙では
あるんですけど・・・・まぁ間違いない。




テレビの放送を聴いていると今のところ、構造計算の偽造を行った
建築士の姉歯(既にニュースでも呼び捨てw)ばかりに白羽の矢が
当たっているが、元請の設計事務所や施工業者も完全に同罪である。

実は構造計算書自体に偽造が施されていた場合は、これは何らかの
構造専門知識を有する専門家が見ないと偽造自体を見破る事は
難しいんだよね(書類自体が何百ページもある膨大なデータだし)。
自分の会社で出来ないからそれ専門にやっている会社に外注を出す
場合が多いのですよ。
だから、元請である設計事務所が姉歯に構造設計を外注に出す。
構造設計には構造計算書と構造図の2つが一般的にセットです。
構造計算をする為には構造図が必要だからですね。

そこで問題になるのが構造図!これは柱や梁の大きさ、鉄筋の量な
どが記載された図面でこれは建物の大きさなどから、多少の経験がある
人間なら構造の専門家じゃなくても少しぐらいは解るの。
今回のように姉歯によるかなり大胆な構造の手抜きをした場合は
間違いなく、設計事務所と施工者にはこれは危険ってのは経験上
解るんですね、いやわかって当然なんですよ。
だから、姉歯が勝手にやった事では通らないんですよ。
それゆえに、元請の設計事務所と施工業者はグルです。
(知っていて目を瞑ったことになりますからね)。


さて、問題は建築主。
売られていたマンションが耐震強度的に優れているなどの
うたい文句にしているあたりで相当怪しい。

ここでの注目ポイントは姉歯が絡んだ物件すべての建築物に
偽造があったわけじゃないって事ですね。

つまり姉歯ってのはあくまで外注で仕事を請け負っているだけ
なので彼が勝手にやったと言う可能性は極めて低いんですよ。
ましてや、彼の偽造はイーホームズと言うザル検査機関でしか
通用しないのです。どの検査機関に確認申請を提出するかは
建築主、もしくは元請の設計事務所が決定するので姉歯が
勝手にやっても普通に行政機関に提出した場合、検査を
通らないので、そうすると、構造計算書はもとより
設計図も全て製作しなおしになる、もっと言えば、偽造と言う
やり口がすべて明るみにでる可能性があるんですよ。

この事を考えると、最初から不正をするつもり
(イーホームズに提出する)で、建築主、設計事務所、施工業者、
この三者のどれかが姉歯に指示を出したのは明白なんですよね。

今のところ、それぞれの会社は姉歯が勝手にやった事ですべてを
済ませようとしているようですが、そんなのはまったく通用
しませんね。

しっかし、あの姉歯ってのは相当いっちゃってますね。
普通の精神力だとまず耐えられないでしょうね。
たしかに、彼は強引に仕事を押し付けられた、やらされた可能性は
かなり高いのですが、それにしても・・・普通なら自殺モノですよ。
よくテレビに出てインタビューに答える余裕があったな、と。
自発的にやったわけではなく、やらされたという事で罪の意識が
かなり薄れているのかもしれませんが・・・・。


とにかくこの事件は早めに発覚して良かったとしか
いいようがありませんね、地震がおきて、偽造のあった建物だけ
倒壊してからじゃ大問題になってましたからね。
国土交通省も冷や汗モノだったと思います。

それにしても、この偽造の関わった人間で得をしているのは
建築主だけなんですよね。その他の業者は特にお金が入るわけでも
ないですし、ただただリスクがあるだけです。
あえて言えば、仕事量が増えるというぐらいですね。
ただ、どれもリスクの事を考えると、とても割に合わないのは確かです。

つまり、切羽詰ってやった事と考えるのが正解だと思います。
現に、建設会社は倒産しましたしね。


この事件で建設業界にかなり不信感を募らせた方も多いかもしれ
ませんが、こんな大掛かりな事をやっているのはかなり稀です。
確かに、施工上の小さな不正はまだまだイロイロな会社でやっている
のは間違いないでしょうが、ここまで大掛かりにやっているのは
まずありません。リスクが大きすぎてやるメリットがあまりにも
無いからです、この手の不正は証拠隠滅ができませんので、いずれ
罪が明るみにでるのが明らかなんですよ。


普通の仕事の運びから行くと、建築主はクオリティーの高いものを
望みます(お金を出すのは彼らですから)。
設計事務所は建物を設計する上で多少の無理をいいますが、
それを止めるのが構造専門家だったり、施工業者です。
すくなくとも私の周りで行われている作業はそんな感じです。
それがあたりまえなんですけどね。

いや、みんなプライドをもって仕事をしているのに、
一番憤りを感じているのは建設業界の人間だと思いますよ。

あ、いまごろ焦ってる人もいるかもしれませんが(汗)。


※追記

記事の内容とは直接関係があるとはいえないのですが
やっとこさんの希望により、 「やっとこ」ブログさんにTBしました。
設計事務所に勤める人間として11月26日現在で明らかになっていた
情報を基に推測したものです。
必ずしも正しし情報ではありませんのありからず。

またイロイロと新たな動きもあるようですので、もう少ししたら
追加で記事を書きたいと思います。
by driplanguage | 2005-11-26 23:59 | 雑   書